先日,金沢大学大学院自然科学研究科の博士後期課程に在籍して研究しておりました弊社の者が,アースアンカーの引張り抵抗力に関する博士学位論文を公聴会にて発表しました。公聴会はZoomでも配信し,大学の外からも聞いていただけました。

アースアンカー地盤変位FEM

アースアンカーの研究を振り返ると,2016年に簡便なアースアンカー工法をオーストラリア内外で普及させているシドニー郊外の企業と意気投合し,日本に持ち込む権利をもらったのがはじまりでした。シドニー郊外といっても,シドニーから各駅を40分ほど乗り継いで最寄駅から歩いて30分くらいにポツンとある会社で,40度以上ある真夏日に訪ねていったので,こんなくそ暑いなかスーツを着て駅から歩いてきたのか??と笑顔で迎え入れられたのを覚えています(おまけに会社には扇風機しかありませんでした)。今では,事業も拡大してより良い環境にオフィスを新たに構えているので,こちらとしてもなによりです。

グラウトが不要で便利なアンカーで,オーストラリアの同企業だけでなく欧米の企業でも実績があるのですが,日本国内では同等品が構造物の基礎の控え用途で使用されたり,構造計算を要しないアンカーピン代わりとして使われたりしている程度で,盛土や法面工事をはじめ災害対策などに本格的に適用するには,性能をあらためて検証する必要がありました。

そこで,金沢大学の地盤工学研究室に相談し,金沢大学と弊社の共同研究がスタートしました。

松本樹典 名誉教授をはじめ地盤工学研究室の先生方からのご指導を仰ぎながら,院生や学部生の協力も得て,複数の室内実験,現場実験,数値解析を実施することができました。地盤工学系の学会関係の国際会議にも毎年複数発表し,研究終盤には,構造工学系の先生方にもお世話になり,今秋,博士論文として約4年に及ぶ共同研究の成果がまとまります。

来年には,シドニーで開催される地盤工学系で最大級の国際会議ICSMGE2021に日本枠として発表することができるので,研究成果というお土産を持って開発元に里帰りすることができます。同企業とも研究を実施しているシドニー大学の研究室とも意見交換を行って,実務適用にむけて研究成果がさらにブラシュアップするつもりです。

基礎研究から腰を据えて行いましたので,引続き金沢大学と連携しながら,アースアンカーの現場適用に向けて実務展開に取り組んでいく所存です。