先日のブログで,ICT法面工(法枠工)における要求計測精度を満たすUAV測量を試行すると書きました。
テスト計測を実施する現場には,法枠工及び簡易吹付法枠工を施工中の長大な法面を選択しました。テスト計測では,ドローンのカメラを斜面に正対させたまま”自動”飛行による計測ができて,かつ,その計測精度は手動計測や従来の真下を撮影して計測する手法よりも向上するか検証しました。さらに,ICT法面工の要求計測精度を満たすために必要な一連の計測作業の改善項目の洗い出しも目的としました。
ドローン測量を法面を対象に行う場合,カメラを真下に向けて撮影すると,高低差による歪みが出たり,凹凸による死角によって,精度の良い3次元データは取得できません。その問題は,カメラを斜めに向けて斜面に正対させて撮影することで解決できます。ドローン測量が始まった当初は,真下に向ける撮影方法しか認められていませんでしたが,今ではこの斜め撮影が精度向上のために必要とされ,国交省からも認められています。
そして,ICT法面工に吹付工や法枠工が追加されて,「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」が整備されたいま課題となっているのが,法枠工出来形計測時の要求精度(±10mm以下)を満たすドローン計測手法を確立することです。
熟練したパイロットがラップ率を高めて手動飛行で計測する方法で精度をクリアしている事例は既にあって,管理要領も整備されたことで法面工における公式な3次元データ活用がいよいよ本格化します。
当社は,より広く一般的な手法とするため,自動飛行でICT法面工に適応できるドローン測量の手法化したいと考えていました。そこで,芝本産業(株)と連携して同測量手法の確立に向けて取り組みを開始しました。
芝本産業は,斜面に正対させてドローンを自動飛行させられる,フライトアプリケーション,”Site Scan for ArcGIS”によるソリューションを提供する企業です。
テスト計測の結果,Site Scanを使えば斜面正対(斜め)撮影が自動化でき,従来の手法よりも精度が向上することが実証できました。テスト計測ではICT法面工要求精度を満たすには至りませんでしたが,対空標識の種類や,検証点・標定点の設置レイアウト,中心点座標取得方法,オフセット,ラップ率,データ補正作業など,一連の作業で改善が見つかりました。
続いて,R306のグラウンドアンカーを施工中の凹凸の激しい急峻な法面現場にて,上記改善点をいかして,本計測を実施しました。
本計測の結果,ICT法面工の要求基準を満たす非常に高精度な計測ができました。取得した点群データの精度が実証できたので,自信を持ってグラウンドアンカーのマーキングの標高管理にも実用しました。
芝本産業の知見と,当社の法面現場での3次元測量ノウハウを組み合わせることで,ドローン(UAV)の自動飛行よるICT法面工適応可能な3次元測量が可能になりました。
同手法は,ICT法面工を実現するためのドローン(UAV) 測量手法の一つとして,役に立ちます。3次元点群データは,これで現場実測データの補完データ扱いではなくなります。
当社は同手法によって,3次元点群データによる現場管理を本格的に進めていきます。
同手法の共有や報告書全文をご希望の方はお気軽にご連絡ください。