何事も基礎が大事だと言いますが,アンカーについて研究していたはずの3年以上に及ぶ研究も,巡りめぐって最後には基礎の話に帰ってきました。
基礎と言えばご存じのように,フーチングのような浅い基礎と,杭のような深い基礎があります。浅い基礎は,根入れ深さDfが基礎幅B以下のもの,深い基礎は,根入れ深さのほうが基礎幅より大きなものです。
わざわざ浅い基礎,深い基礎などと分けるのは,それによって支持力の求め方が異なるからであることは,周知の通りです。

アースアンカーも基礎の設計と同様,浅い深いの考え方が必要になってきます。なので,当初グラウンドアンカーやロックボルトの設計のように考えようとしていたアースアンカーですが,結果的に基礎の考え方に寄ってきました。

アースアンカーの場合,浅いアンカーと深いアンカーをどこで分けるかという話ですが,ある程度締まった砂質土の場合,根入れ深さ(H) / アンカー幅(B) = 6~8がその境になってきそうなこともわかっています。

アースアンカーFEM解析

上記図は,現場引抜き実験(一番上画像)で得たアースアンカーHG180の引張り抵抗力の実測値(赤●)とFEMによる数値解析で得た計算値(青■)を比較したものです。
赤線,青線は,それぞれ実測値と計算値にフィットするようにとった回帰曲線です。

赤線と青線を見ると,青線は,深いアンカーになるかならないかくらいの深さでは,赤線とそれなりにマッチしています。ただ,本実験データでは、H/B>8以降の深いアンカーの実験値がなく十分な検証ができません。

そこで,試しに実測値の回帰曲線(赤線)を微分しました(赤紫▲線)。
この関数を使ってH/B=8の深さなどで微分係数を求めることで,深いアンカーでの実験結果のグラフの雰囲気は想像できます。深いアンカーになると,非線形的な傾向が強くなって指数関数的に増加していくかというと,そうでもないかもしれません。

さらに,計算結果の回帰曲線(青線)を微分した結果(緑▲線)と比較しても,実測値と計算値の傾向では深いアンカーになると違いが広がりそうな気がします。

下記別の図,H50アンカーでは,アンカーが小さいのでH/B=8を大きく超える深さでの実測値があります。
上のHG180アンカーで予測したように,深いアンカーになったあたりで、実測値と計算値がずれていくことがわかります。

小型のH50アンカーは,あくまでこの実験結果では,直線的に引張り抵抗力が増加しています。逆に浅いアンカーとしての実験値がありませんが,もしかしたら浅い範囲では,計算と同じように非線形的な増加傾向だったのが,深いアンカーになると線形的に変わっているのかもしれません。

アースアンカーFEM解析

以上より,砂地盤で鉛直に引張られるアースアンカーの引張り抵抗力は,H/B<8くらいまでは非線形的に増加するけれど,深いアンカーになると,線形的な増加傾向に変わっていく可能性も仮説の1つとして考えられます。

このような感じで,室内及び現場で得られた数多くの引抜き試験などの実験結果をFEM数値解析やほかの計算結果と比較検証しながら,設計モデルを固めていく地道な作業がしばらく続いていきそうです。