アンカー有りと無しの状態で,天端に載荷して斜面を破壊する実験がひと通り終了しました。
実際の実験では,行える実験ケースや規模に限りがあるので,FEM解析によって実験を再現したり,実際にはできない実験をパソコン上で行うことを試みています。
そのためには,実験に用いた砂の力学的性質などのパラメーターをある程度正確に入力しなければなりません。
もちろん,砂の物理的・力学的性質は事前に求めていますが,実験装置や実験条件との兼ね合いを考慮して,実験結果に合わせて解析用にパラメーターを調整します。
内部摩擦角φ’ は,一面せん断試験によって求めており,φ’ は固定します。乾燥している砂なのでc’ も基本的には0ですが,完全に0ということもなく,解析の都合も考慮して調整します。E‘やダイレタンシー角も実験値をもとにしながら,実験結果に合う値を探していきます。
Pythonを使いこなせれば,自動でパラメーターを変更しながら実験ケースを繰り返すことも可能ですが,今回は,泥臭く力技で50ケース回しました。
赤い太線が斜面破壊時の荷重変位関係の実測値です。
変位量15 mm 手前で荷重が抜け,斜面が崩壊していることがわかります。
実験と同様のモデルを組んで,実験結果に近い傾向が得られれば,その時の砂のパラメーターを数値解析用の条件として使用することになります。グレーのラインがパラメーターを変更しながら計算を回した痕跡です。
2日かけて,50ケース回した結果,下記のように地盤のパラメーターの目星がついてきました。ただ,想定よりもE”が小さいので,まだまだ検討の必要がありそうです。
法面工事の設計や照査など,実務利用に役立つ可能性を大いに持っている解析方法なので,FEMによる数値解析の様子は,また紹介します。