ガラパゴス諸島と言えば、ゾウガメやイグアナなど固有種の宝庫となっている島々です。どの大陸とも陸続きになった歴史を持たないため、そこに住む生物は独自の進化を遂げてきました。イグアナがサボテンを食べ、食べられたサボテンは背を高くして抵抗し、新たな食べ物を求めて海に飛び込んたイグアナがウミイグアナになって…..といった類の話は誰しもどこかしらで耳にしたことがあるでしょう。

孤立した環境に最適化して進化することを、そんなガラパゴス諸島の生物たちにちなんで、ガラパゴス化とよく表現します。ガラケーと呼ばれる携帯電話が代表例ですが、日本の製品やビジネスの世界が、ネガティブな意味を込めてそう呼ばれるようになってから久しいです。

ガラパゴス化というのは、日本人が作った言葉だと思うのですが、基本的にネガティブなニュアンスで使われます。日本がいつまでもガラパゴス化した製品ばっかり作って喜んでいたら、気づけば世界から後れを取ってしまいました。半導体にしろ携帯電話にしろ音楽プレーヤーにしろ、今世界で流行っている技術は、日本も先んじて技術を獲得していた分野ばかりです。技術力はあっても、判断を誤って世界のパイを逃してきた数十年の過去があります。

ただ個人的に、ガラパゴス化自体を悪く言うつもりはありません。ガラパゴス化できるというのは、逆に言えばまず自身に技術力があって、それだけ内需があって、一人ひとりに購買力もあって国がそれなりに豊かな証拠です。日本は島国で、長い歴史のある民族で、幸か不幸かまさにガラパゴス状態になってしまいましたが、ある意味でそれは誇れることだと思っています。ガラパゴス化してここまで豊かになった国が一体いくつあるでしょうか。

そんなガラパゴス化の議論では、製造業などに焦点が当てられがちですが、土木建設業もその例外ではありません。ゼネコンの海外展開などはさておき、我々のような零細土木業者は、ガラパゴス化したまま成り立っていられるなら、それに越したことはないでしょう。我々には、ガラパゴスを守るために磨いた技術で、ガラパゴスの国土を守る責任があります。

ただその一方で、孤立した島で暮らしていくのにも限界が来るでしょう。技術者の高齢化や若手の不足、外国人技能実習生が現場で増えていることを見ても、土木建設業にもガラパゴス化の限界が近づいていることは確かです。

ガラパゴスにもいつまで食料があるかわかりません。かつてリクイグアナがそうであったように、海に飛び込んでエサを獲る日が来るかもしれません。 ウミイグアナは進化の過程で肌を灰色に変え、少しでも日光を吸収して体温を保つことで、海に適応できる準備をしていました。

ウミイグアナが見た海は、新たな食糧である海藻で満ちた豊かな海であったはずです。ただ、一見温暖そうなガラパゴス諸島周辺の海は、実はとても冷たいことも忘れてはいけません。