先日の金沢大学との現場実験結果をもとに、アースアンカーを粘性土に適用した場合の引張り力の設計方法として、簡便な方法を導こうとしています。
上記は、3種類の大きさのアースアンカーを1.8mの深さに打込んで引張った際の引張り力と引抜き変位量の関係です。
打設深度1.8mのうち、0 ~ 1.0m程度までが砂層、それ以深が粘土層でできた地盤での実験結果です。
だいたい500mm程度引き上げた時点で上部の砂層の影響を受けると考えて、1.8m ~ 1.3mまでの区間を純粋な粘土層でのデータとみなしています。
縦軸が引張り力F (kN)、横軸が引上げた変位量w (mm)です。
横軸500mm地点の縦線の左が粘土層(clay)、右が砂層(sand)で採取されたデータです。同じアンカーを引き上げている結果ですが、層が変わると、明らかに引張り力の傾向が変わることがわかります。
砂と違って粘土の強度は垂直応力に関係なく、非排水せん断強度Cuで決まるので、それをもとにしてアンカーの引張り力を設計したいと考えました。
上記を考えると、粘土の場合では、アンカーの引張り力がアンカーヘッドの大きさに比例するような気がします。
そこでまた上のグラフを見てみますが、引張り力と変位の関係で見ても、引張り力がアンカーの大きさに比例しているかどうかははっきりしません。
そこで、今度は同じアンカーのデータを圧力と変位量の観点から見ることにします。
下記のグラフを見ると、粘土層では大きさの似ているHG100, HG180のアンカーで同じような圧力を保って変位し、大型のHG320のアンカーも開き切るのに余計に変位量を必要としていますが、同じような傾向で推移しています。そして、すべてのアンカーが開ききったと思われる変位量500mm前後のタイミングで、すべての大きさのアンカーの圧力がほぼ同程度になっていることがわかります。
そして、そのまま右の砂層に移ると、大型の投影面積(A)の大きいHG320アンカーの圧力は小さくなり、やや小さいHG180とHG100のアンカーの圧力が伸びていきます。つまり、砂層では、面積に関係しない部分の土塊も持ち上げることで、多くの引張り力が得られていると考えられます。
当たり前ですが、圧力がどのアンカーでも同じということは、引張り力を面積で割った値が同じということです。つまり、面積が大きくなれば、比例して引張り力も大きくなることを意味します。
ちなみにこの地盤のN値は3-5程度です。それでこれだけの引張り力は悪くないですよね。