令和5年度近畿地方インフラDX大賞において、『特別優秀賞』と『優良賞』を受賞いたしましたので、ご報告いたします。
令和4年度の特別優秀賞を受賞してからこの1年間は、産業用ドローンの導入をきっかけにこれまでPhantomで蓄積してきたノウハウが効果的に結びついてさらに弊社のDXが飛躍した年でした。
令和4年度受賞の現場では女性技術者が1人で計測~解析まで担っていたのが、今年度の現場では女性技術者4名のチーム体制での運用ができるまでに至りました。
「特別優秀賞」を受賞した現場は、民家裏の急傾斜地に法枠工+鉄筋挿入(ロックボルト)工を施工する現場でした。今回は、UAVとTLSを駆使して、法枠工を死角なく密に点群化して出来形管理を行いました。一見、昨年度の取り組みと同じように見えますが、今年度は点群データの”質”が飛躍的に向上しました。具体的には、昨年度の受賞段階ではICT法面工として法枠工の出来形管理が可能だと実証したことが画期的だったのですが、今年度は死角なく密な点群で出来形管理を行うことに成功しました。計測精度を満たすだけの点群と出来形管理が効果的に行える点群とは全く別物であることに着目し、いかに計測精度を満たしながら法面上の構造物(法枠)を死角なく密に点群化することができるかを検証しました。
一般的に法面を精度よく計測するには斜面正対飛行が推奨されます。しかし、斜面正対飛行だけでは法枠のほぼ表面しかまともな点群にならないことが課題でした。いくらICT法面工の要求計測精度を満たしているといっても、出来形管理を行うには、法枠の桁の側面や裏側が抜けていて立体感に欠ける点群となっていたことを課題に感じていました。Phantom4 Proの性能を絞りつくしてやり切ったので、産業用ドローンを導入することでさらに高いレベルを目指しました。これまでPhantomで培ってきた計測ノウハウと高性能のドローンが組み合わさったことで、自動飛行ルートや飛行条件を自由自在に操って計測精度を満たすことが可能になりました。それぞれ目的の異なる複数の飛行条件で撮影された写真を組み合わせて作成された点群は、斜面の起伏やオーバーハングを全く問題とせず、法枠のエッジをくっきりと再現し、どこから見ても抜けのない高密度なデータになりました。上記内容については、今年の第58回地盤工学研究発表会でも発表しました。
法枠工での活用という、昨年度と一見同じに見えがちな取り組みの”質”の違いを理解していただき、評価していただけたことは、大変光栄でありがたく存じます。
「優良賞」の現場では、落石防護網の出来形管理を3次元点群データで行った取り組みを評価していただきました。落石防護網の出来形計測は、高所に人が登って危険な作業になりがちでしたが、点群データを活用することで安全かつ効率的に出来形を計測することが可能になりました。
落石防護網は、裏の地山やモルタル吹付の色と同化して、RGB表示では判別しにくかったのですが、受講強度を活用することで出来形計測時の視認性を向上させる工夫も取り入れました。
グラウンドアンカーの標高管理を点群データを活用した取組も実施しており、グラウンドアンカーのマーキングからTLSを活用して標高を管理し、マーキング後の施工管理でも打設位置を点群データ上で管理しました。ざぶとん枠の厚み計測にも点群データを活用したり、ICT法面工の工種に該当していないものの点群データのあらゆる現場活用の模索に取り組んだ現場でした。
ICT法面工の適用工種はまだまだ限られていますが、こうして施工者が試行錯誤して施工の効率化のために取り組んだ内容を評価していただけることは、理解者がいて活動を見てくださっていると実感でき大変勇気づけられます。
現在は上記に加えて法面工事でCIMも活用するようになりました。現場のデジタルツインや女性技術者の活躍、安全性の向上につながっています。そして何より、設計照査や施工管理の精度も向上してよい施工に繋がり、意味と効果のあるICT活用ができています。
この賞に恥じぬよう、2024年も法面工事のDXを推進して参ります。