先日、斜面のすべり円弧の中の移動土塊を分割したスライス底面に働く垂直応力やせん断強さは、ロックボルトと交差したところだけ極端に大きくなることを確認しました。すべり面と補強材が交差したところで応力が大きくなっているのを見ると、改めて交差する角度が重要なことがわかります。

そこで、ロックボルトはどの角度ですべり面と交差した時に引張材として最大限機能するか考えます。

内部摩擦角をそのまま使う例もありますが、地盤の応力なども考慮しなければなりません。

世界中で有名な論文ですが、R.A. Jewell & C.P. Wroth (1987)”Direct shear tests on reinforced sand”の論文で明らかになっていて、同論文の内容は切土補強土工指針にも掲載されています。

滋賀県がウェブに出している資料にも、同じく切土補強土工指針から下記の画像が引用されています。

補強材打設角度と最小主応力方向

この画像をみて、ふむふむなるほど。ってわかりますか?
私は最初にこれを見たときちんぷんかんぷんでした(α、βはまだしも、εっていやですよね)。
それで結局、何度(どの方向)やねん??って印象でした。

答えは補強土工指針に示されていて、上の図で最小主ひずみ(最大伸長ひずみ)ε3方向とされている角度です。つまり、土がつぶされて伸びる方向に配置するのが引張材としては有利ということです。
。。。ふむ(笑)。

では、ε3方向ってどの方向で、どうやって求めるのでしょう。

少しごちゃっとしているので、上の図の意味をJewell&Wroth(1987)の論文から遡ってひも解いていきたいと思います。

まず同論文の内容を参考にした下記の図をご覧ください。

ロックボルトすべり面角度せん断試験

一面せん断試験のように、上の土と下の土を真ん中で水平方向にずらしてせん断する場合、緑色の補強材をどの角度に設置すればせん断強さがより高まったかを検証しています。

補強材は、すべり面と垂直な角度(β=0°)から平行な角度(β=90°)をこえて、各βごとに実験がなされています。

みなさまは、直感的にβがいくつの時にこのすべり面のせん断強さが最大(補強材の効果が最大)になると思いますか?

これは上記の通り切土補強土工指針でも論文が紹介されていてメジャーな話題なのですが、この問題にはひずみや主応力とか土圧(主働土圧・受働土圧)とか土質力学の基本的な要素が詰まっていて、きっと何人かの疑問を解決できるはずなので、これを機に1つずつ順を追って話してみます。

ではまた次回^^