昨年読んだ日経コンストラクションの記事で、『液状化しない前提を転換、国交相が開けた盛り土規制の「パンドラの箱」』というものがありました。タイトルや内容が印象に残っており、他人事ではないのでたびたび盛り土について追いかけていたのですが、昨年末に国交省から盛土等防災マニュアル(案)が発表されていました。

盛土が滑動崩落するのは、地震による繰り返しせん断で過剰間隙水圧が発生して盛土底部が液状化することが大きな原因となるので、安定計算時に間隙水圧の検討や3次元解析による検討も見込まれるようになったようです。

以下、国交省『盛土等防災マニュアル(案)について』からの引用です。青背景は付け加えました。

盛土等防災マニュアル
盛土等防災マニュアル

本マニュアルでは、渓流部など条件によっては3次元の変形解析や浸透流解析も推奨されています。法面保護工事で対象とするような斜面と異なり、盛土では盛土材料のパラメータが比較的既知なので、FEM解析で地盤内の応力や変形の過程を解析したり、せん断強度低減法で潜在的なすべり面を見つけたり(といっても元の地盤と盛土との境界がすべり面でしょうけれど)安全率を求めたりが幾分やりやすいのかもしれません。

谷埋め盛土の滑動崩落では、底面の抵抗力が液状化によってなくなったらあとは側面が抵抗力となると、3次元で側方の抵抗力を加味した安定計算をするのは重要な気がします。2次元計算が標準となっているような書き方にも思われますが、このあたりも3次元解析に含まれているのでしょうか。

弊社がメインで対象とするような切土や自然斜面では、すべり面が液状化するような事態は考えにくいですが、液状化までいかないまでもすべりには間隙水圧が影響しています。すべり面の間隙水圧を検討したり、すべり土塊の側面の抵抗力をすべり抵抗力として加味したりする点において、3次元解析の有効性は盛土の問題を参考にすべきところが多々あると感じます。