滋賀県北部では水曜日にはひどい雷が鳴りましたが、昨日今日と抜群の天気で気持ちがいいです。そんな中でも外出自粛なので、Zoomを使って会議したりテレワークをされている方も多いのでしょう。

Zoomと言えば、セキュリティ面の課題をずっと抱えていましたが、5月7日、セキュリティ強化のために暗号化技術を持った米企業を買収したと発表しました。コロナ騒ぎで利用者が増えて急ぎで買収したのか、その前から計画があったのかはわかりませんが、さすがアメリカのスタートアップというスピード感です。

セキュリティに多少問題があるのはわかっていても、サービスが存在しないより、使えないよりはましです。コロナに応じて利用者が爆発的に増えた状況で買収を完了させたり、走りながらでも動いている感じはユーザーとしては好感が持てるのではないでしょうか。

これがもし日本の企業ならどうなっただろうと想像すると、セキュリティの脆弱性が発覚した時点で社会的につぶされてしまいそうな気がします。

土木(法面)業界で弊社が取り組んでいる話に置き換えると、欧米やオーストラリアではすでに多数の実績もあるアースアンカー工法も、日本で新しくやろうとすると、反対意見をいくつも越えなければなりませんし、受け入れられるまで時間がかかります。

アースアンカーのアンカーヘッドによる支圧抵抗の引張り力は、グラウトの周面摩擦抵抗による引張り力に比べて不安があると、根拠は不明ですがよく言われます。 でも、アースアンカーは、セメントを使いませんが、引張って確認試験をして所定強度を満たして良しとする仕組みはロックボルトと何も変わりません。

アースアンカーは、ロックボルトでは周面摩擦抵抗が満足に取れない土でも十分な引張り力が得られるなど、決定的な利点があります。しかし、なぜかそれに対して、セメントに比べると不安だといった声が出てきます。

そもそも、グラウトでは周面摩擦抵抗がとれない現場条件でも、数トンの引張り力を得られる工法です。その引張り力に対して、ロックボルトの仕組みと比較して不安ということ自体がナンセンスだと思っています。だって、その現場ではロックボルトは抜けるんですから。

それでも弊社では、アースアンカーのメカニズムをもっとクリアにしてそういった不安を解消するために、大学と共同研究をここ3年ほど継続して実施しています。日本ではまだまだ不確かだったアースアンカーのメカニズムを実験によって明らかにしていっています。そうやって課題を解決して市場に受け入れてもらえるように取り組んでいる結果、実績も出始めてきています。

Zoomやアースアンカーの話で何が伝えたいかというと、何かを変えるようなサービスには市場で試されながら走って考える期間が必要だということです。その期間中でも他にないメリットをユーザーに提供できれば、致命的な欠陥でなければ、多少の欠点や不便はチャームポイントになり得ます。

それを避けようとすると、当り障りのない、従来に比べて何を変えたのかもわからないような類似工法ばかりが生まれてきます。

Zoomは対面での会議には敵わないかもしれません、セキュリティにはまだまだ不安があるかもしれません。でも、外出自粛期間中、ないよりはあったほうがいいですよね?Zoomのビデオ会議で仕事を進められたり、オンライン飲み会で気が紛れて助かった人は多いはずです。

そうやって一度メリットを感じてもらえると、ユーザーは使い続けてくれると思います。もちろん、Zoomが暗号化技術を持った企業を買収したように、課題を潰す努力をしていることが前提ですが。

このコロナ危機をきっかけにして、 一方で課題があると理解しつつも、その新しいサービスやモノが持つメリット部分を享受するような日本になればいいなと思います。コロナの治療薬などもそうですが、その風土ができると新しいイノベーションも日本から生まれやすくなるのではないでしょうか。

あとどうでもいいですが、ちなみに、チャームポイント(charm point)は和製英語です。