地域の守り手として建設業の従事者はエッセンシャルワーカー的な存在です。
そんな建設業の就業者人口は、ピーク時の平成9年に比べて、令和3年時点で約30%減少しており、地域のインフラや命を守ることに直結する建設業の担い手確保は、業界を超えて社会全体の喫緊の課題であります。そのため、建設業のイメージアップや出前授業に関する活動が、各地域の有志によって実施されています。ただ建設業協会など組織立って実施されている事例はまだ少なく、ゼネコンのほか地域の建設会社など問題意識を持った各々が、土木に関する出前授業を実施している状況かと思います。

当社でも今回新たな試みとして、シン・マイスター・ハイスクールとして認定されている滋賀県立彦根工業高等学校と連携授業を実施させていただきました。毎年のように現場見学会でお世話になっているのですが、今回は3日間の日程でまとまった授業を行わせていただきました。

授業内容は、建設業のDXをテーマに、土木(法面)の現場でのICT活用について座学と実技を交えて行いました。

土木_ICT_出前授業_大翔

「1日目」
ドローン(UAV)と地上型レーザースキャナー(TLS)の特徴を学んだ後、3グループに分かれて測量の計画を策定しました。計測対象は、日ごろ見慣れた体育館とし、ドローン(UAV)の自動飛行ルート作成したり、地上型レーザースキャナー(TLS)を扱って体育館を3次元点群データ化する計画を作成しました。ドローンの飛行ルートは各自一つ作成し、各班ごとに2日目で使用するルートを1つ決めました。

ドローンは実機に実際に触れてもらい、カメラやレーザー、バッテリーの重さなども確認してもらうことで、リアルな実習を試みました。TLSは、ミラーを捕捉し、タブレットでの操作やミラーの気泡合わせて機械を設置する作業を事前に体験しました。

彦根工業高校_(株)大翔_出前授業_土木

「2日目」
策定した測量計画に基づき、実際に3次元計測作業を行いました。ドローンでの計測は、写真測量にて体育館前面を撮影し、レーザー測量にて真上から計測する作業を組み合わせました。そのほか、小型ドローンでの手動飛行体験、地上型レーザースキャナーで壁面を計測しました。さらに、3次元の基準点を設置するための事前作業としてレベルでの水準計測も体験しました。

彦根工業高校_(株)大翔_出前授業_土木_ドローン

「3日目」
測量計画を作成し、実際に計測したデータを解析しました。UAV写真測量のデータ処理の方法を学んだあと、各班のデータをみて指定箇所(窓枠、バスケットゴール、等々)の長さや高低差、面積を計測しました。自分で測量計画を作成して処理した点群データを使って正確な計測ができることを実感してもらうことで、建設DXの一連の作業を体感してもらうことができました。

大翔_ICT_土木_出前授業_彦根工業高校

地域の建設業従事者が地域の守り手であるという事実は、建設業に携わる当事者以外はあまり認識していないことかと思います。
道路は壊れたら勝手に直っているもの、地すべりは未然に防がれ、橋なんて壊れるわけがない、雪が降っても通勤の時には除雪されている、それが当たり前になっています。震災の復興などでも昼夜問わず懸命に作業する建設従事者が、時間をかけて取り上げられることは多くありません。都道府県の職員の方々が、道路維持などのために年間数千件ものパトロール報告を処理したりして地域のインフラに目を光らせていることも、知られていないことでしょう。
ただ逆説的ではありますが、それこそが地域の建設業者が守り手として機能している証拠です。人知れず地域を守っている存在であり、その存在が注目されないほど当たり前のように仕事をこなしているのです。そのほうが社会は幸せです。

しかし、そんな幸せな社会はそろそろ終わりを迎えます。近い将来必ず、建設会社がさらに貴重な存在となり、その従事者が地域の守り手であると否応なしに世間に認識される時代に突入していきます。男性・女性は関係ない、若手かベテランかも関係ない、ICTをひっさげて総力戦で地域を守る時代です。そんな時代の担い手は、今の高校生など若い世代であり、彼らに対して授業をする機会を与えていただいたことを誇りに思います。

彦根工業高校の先生方、生徒のみなさま、今回は誠にありがとうございました。