精緻に表現された3D点群データで工事現場を管理する毎日の中で、点群データを発注者のクラウドにアップするとVRゴーグルをつけて発注者が立会を行ったり、3Dモデル化されたVRかメタバースで橋梁や法面構造物の維持管理点検をしたり、近い将来を想像します。

ひと昔前のSFになりつつある現実なのですが、国交省が主導している日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトPLATEAUでは、3D都市モデルを各種データと連動させてあらゆる活用をする取り組みが進められています。

https://www.mlit.go.jp/plateau/

さらに国土交通データプラットフォームでは、防災やバリアフリー、交通など国土や経済に関するデータをプラットフォームのように集めて連携させて活用させはじめています。地質データや工事のデータ、点群データなどもどんどん集まって、マップ上に表示されています。

国土交通省データプラットフォームの構築
https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/pdf/01.8_kikaku_siryou1.pdf

国土交通データプラットフォーム上での連携データについて、静岡県の点群化のプロジェクトや東京都のICT活用工事データ、国交省の工事・業務データの活用が今後各都道府県レベルでもスタンダードになったりするかもしれません。

とくにICT活用工事については、電子納品の際に点群データを納品して、データプラットフォームにのせて将来に維持管理に活用するというのは、近いうちに義務化されてもおかしくない気がします。

今後、デジタルツインやIoTの流れの中で、現実現場とデジタル現場の境目がどんどんなくなっていくのでしょう。

弊社はi-ConstructionのうちICT法面工において、ICTを活用した法面の現場管理を推進しているので、土木工事や防災工事がデジタルツインの流れに乗っていくのが将来の国土維持や担い手の確保にとって不可欠だと考えています。ただその一方で忘れてはならないのは、デジタルだけで土木・防災工事は完結しないということです。それはこの先10年、20年たっても変わらないでしょう。

デジタル化の流れが加速している今こそ、人間の施工力の価値はますます向上しています。特に法面上の法枠工や鉄筋挿入工の施工は重機のオペレータ作業と比べてもはるかにマシン化しにくく、価値は今後さらに高まるでしょう。

今、ICT法面工やデジタル化とPRしているように、それが当たり前になった将来は、優秀な技術者の手による施工をICTのようにPRしている、そんな気がしています。スマホでも点群がとれるようになりましたが、工事現場にICTが普及し切る将来は思っているより近いのかもしれません。しかしその世界では、サイバー空間での技術者が増加する反面、フィジカルな現実で作業ができる技術者は少なくなっています。デジタルツインと称されるその世界観の狭間で、そのとき何が起きるのでしょうね。

鉄筋挿入工