当社がはじめてドローン(UAV)を手にしたのは、2016年でした。

6年前の秋でしたので、ちょうど今ころです。

当時は、弊社も毎年ブースを出展しておりましたが、長浜バイオ大学ドームでびわ湖環境ビジネスメッセという展示会が開催されていました。そこで、はじめてドローン(Phantom 4 pro)を目にしました。

その冬には、雪の積もったウッディパルの駐車場で初めてドローンを飛ばしました。

それから着工前や完了写真、履行報告の写真と、全景が把握しにくい法面を撮影をするのに重宝しました。現場でドローンを飛ばしているだけで驚かれていたころです。1,2年もすると、工事現場でドローンを飛ばしたり、履行報告の写真を空撮するのはどこでも当たり前になりました。

大翔 奥琵琶湖 ドローン

それからほどなくして、UAV写真測量というのが出始めてきました。ドローンで写真を何枚もラップさせてとれば、現場が3次元の点群データになるという技術でした。妙な模様の対空標識と呼ばれるものを、法面上に配置してドローンで写真をとれば、たしかに法面を3次元の点群データで手に取るように把握することができました。とりあえずひたすら、対空標識を思う位置に設置して計測を行いました。これまで横断測量などでミラーを持って計測していたのが噓のように、任意の断面でパソコン上で横断が切れるようになりました。

法面レーザースキャナー3次元測量

それとちょうど同時期に、地上型レーザースキャナーSX10を導入しました。地上からはレーザースキャナーで、空からはドローンでのり面の3次元計測を行って、現場を3次元の点群データ化するのは、弊社では当たり前になりました。

このころ、ICT法面工が工種拡大で追加されるという話は、噂にも聞いていないころです。

i-ConstructionとしてICT活用工種に追加されるとか、費用が設計に入るとか入らないとか、そんなことは二の次でした。正規の出来管理としては認められないとわかっていても、現場を3次元点群データにして出来形を計測してきました。

最初は手動でやっていたUAV写真測量でしたが、だんだんと自動飛行計画を組んで自動飛行で3次元計測ができるようになりました。自動飛行でフライトさせると、枝にぶつかったり、いろいろなトラブルも経験しました。

国交省がUAV写真測量の基準案などを整備するにつれ、それにのっとった計測を意識するようになりました。ラップ率や精度を満たすためには、自動飛行が事実上必須になりました。

レーザードローンでも計測を実施しました。樹木の茂った法面を補強するユニットネット工とSD(スタンドドライブ)工法による自然斜面補強土工の現場をUAVレーザーで計測しました。たしかに樹木があっても地山の形状をある程度把握することができました。UAVレーザーのメリット・デメリットも明らかになりました。

法面 横断図 UAVレーザー

数年前、ICT活用工種拡大として、ICT法面工がついに活用工種に追加されました。国交省が3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)を整備し、法枠工の要求計測精度も追加され、いよいよ準備が整いました。

3D点群データによる出来形管理をずっとバックデータ扱いとして自社内で活用してきた当社にとって、待ちに待った出来事でした。これまでの点群データを出来形管理として正規に使えることを意味し、これまでのICT活用の取組と蓄積したノウハウがより大きな意味を持つことになりました。

さー、点群データをいよいよ本格活用しよう!

そうして動き出しましたが、ここで”計測精度”という壁にぶちあたりました。

法枠工の桁幅と桁高の計測を点群データ上で行うには、3次元点群データを10mm以内の誤差で計測する必要があります。

平面ならまだしも、起伏のある法面をドローンで計測して、点群と実測値の精度を10 mm以内におさえることは困難を極めました。計測誤差10mm以下というのがどういうことかというと、ある2点を現場でテープで測った距離が、点群データでポチポチと測った距離と10mm違わない、ということです。オーバーハングがあろうと、切り株があろうと、凹凸があろうと、法面全体でそれを満たしていないと、法枠工の出来形管理には使えません。せっかく出来形管理基準が整備されても、これでは事実上実施が不可能なことを意味しました。

UAV斜面正対自動飛行_飛行プラン

しばらく試行錯誤した結果、それまであまり気にしたことがなかった対空標識の配置の仕方(評定点、検証点)や対空標識の物理的問題、中心座標をTS計測するときの計測方法も計測精度に大きく影響を与えることがわかってきました。

さらに最も重要な発見として、斜面正対飛行が法面で計測精度を向上させる要であることもわかりました。最適なオーバーラップ率やオフセット距離を試行錯誤しながら発見しました。

滋賀産業新聞_大翔

そのタイミングでICT法面工として発注された春日山公園整備工事を受注して、法枠の出来形管理まですべてICTを全面活用して実施した実績を積みました。R306工事では、グラウンドアンカーの標高も点群データで管理しました。現在も、吹付モルタルの維持補修工事において、面積やロックボルトの配置などにICTを全面活用して施工管理しています。

法枠出来形管理_ICT法面工

ICT法面工のための3次元計測に関する上記取組みは、すべてPhantom 4 proを活用してきました。UAV測量や3D点群で法枠の出来形管理をされている方なら理解していただけると思いますが、Phantomでできることはこれですべてやりきりました。

Phantomの能力を最大限に絞り切った結果、さらなる向上を目指すと、いよいよ機械とカメラの性能の問題にいきつきました。性能を絞り出したからこそ、Phantomでできること、できないことの限界が明確になった瞬間でした。

ここまで来るのに6年かかりました。

いよいよ新たなUAVを導入して、ICT法面工およびICT活用の分野においてさらなる技術力向上を目指します。