アースアンカー引抜き実験中に2秒ごとに撮影した画像を解析して,アンカー引抜きに伴って移動する土粒子の動きを追いかける実験を数年前から何パターンかシリーズでやってきました。

アースアンカーの設計では,引抜き時に影響を受ける地盤の範囲や,すべり線の角度などが設計上大きな意味を持ちます。そこで,FEMによる数値解析を行って実験の再現性を確認しながら,FEM解析の妥当性も検証します。

その後,地盤条件やアンカーの設置深さなどのパラメータを変更しながら,実際の実験ではできない条件での実験を繰り返します。今回の実験は奥行き方向の変形を無視している,平面ひずみ条件(2D)なので,その結果を受けて3次元モデルへ拡張します。3次元の現場実験データも採取しているので,その結果とも比較しながら3次元モデルを構築することが可能です。

下記が,FEM解析によるアースアンカー引抜き実験の流れです。


地盤内にある青いアンカーを引張ります。

FEM 2D anchor resistance

引張る前の地盤の様子です。青いメッシュは砂です。

FEM 2D plaxis anchor

プレートアンカーを引張って変形した地盤の様子です。

FEM 2D plaxis anchor resistance

引張り時に変形した地盤の影響範囲がよくわかります。

FEM 2D plaxis anchor displacement

これは,上の変位をベクトルで表したものです。土粒子の動きがよくわかりますね。

FEM 2D plaxis anchor displacement vector

アースアンカーの設計のためには,引張った際に影響を受ける地盤の範囲を考える必要があります。

上の実験では,粘着力の無い乾燥した砂での実験なので,こんな結果になっていますが,内部摩擦角など地盤パラメータを変えるとまた違ったすべり線による破壊形状が出てきます。

周面摩擦抵抗と削孔長のみで引張り力を計算できるロックボルトでは,地盤の破壊形状なんて考える必要がありません。そこが,これまでアースアンカーが普及してこなかった原因だと思っています。

けれど,グラウンドアンカーやロックボルトの場合に極限周面摩擦抵抗値が地盤条件ごとに係数として与えられているように,アースアンカーの場合も,地盤条件や設置深さをパラメータとする計算式を作ってやれば,従来通りの極限釣り合い法で簡単に引張抵抗力が計算できます。

土中で回転して開くようなアースアンカーの研究事例はほぼ無いものの,開き切ったプレートアンカーの研究をしているような事例は過去に多くあります。それらの研究も参考に妥当性を検証しながら計算プログラム作成中です。