彦根工業高校 建設科 1年生のみなさん、ようこそ!
現場見学会の概要をこのページに記載します。
法面(のりめん)というのは、人工的につくられた斜面です。
居住可能な国土が限定されている日本では、人が住む場所を切り拓いたり、道路をつくったりする場合に、どうしても山を削る必要があります。たとえば山を削って道路をつくると、削った後には、人工的な斜面=法面ができます。
道路をつくったからといって、この法面を放っておくと、将来くずれてしまいます。
そこで、道路工事などと合わせて法面を保護するための工事が必要になります。
法面を保護する方法は、崩壊の危険性に応じて多種多様のものがあります。
斜面の表面がぽろぽろとこぼれ落ちたり、風化した岩が落下したりしないように、法面を保護する法面保護工です。
緑化を促して表面を保護する植生マット工や、モルタルを吹き付けて岩盤などを保護するモルタル吹付工や簡易法枠工などがあります。
土砂災害で斜面が崩壊する場合、その多くが斜面の表層から深さ3m以内の層が崩壊します。
それらを表層崩壊といい、それを予防するのが鉄筋挿入(ロックボルト)工です。
法面工事の最も代表的な工法で、鉄筋挿入工とコンクリートやネットを組み合わせて法面を保護します。
滑り落ちようとしている土塊を画鋲でピン留めするように、2~5mほどの鉄筋を安定した地盤内に打ち込んで固定します。
鉄筋をいれるために直径65~90mmの穴を掘り、穴の中心に20mmほどの鉄筋をいれ、その周りにセメントと水を混ぜたセメントミルクを流し込んで固定します。
それらの鉄筋は、表面のコンクリート(法枠)やネットと連結されて一体化されることとで、斜面全体を保護する働きをします。
では、上記2つで抑えられないもっと深いところから地滑りのように崩壊する場合は、どのように予防するのでしょうか。
法面工事の中でも規模の大きな対策工として大きな抑止力を持つのが、グラウンドアンカー工です。
鉄筋挿入工が5m程度の穴を掘って対策するのに対して、グラウンドアンカーは、数十mまで穴を掘って対策します。
表層よりはるか下から滑ろうとしている土とその下の安定している岩盤などをサンドイッチするように挟み込む工法です。
安定した岩盤にコンクリートで定着したアンカーからのびるワイヤロープを表面で数十トンの力で引張って、引張った力を与えたままくさびなどで固定します。すると、すべろうとしている不安定な地盤は、安定した地盤と挟み込まれて安定します。
コンクリートや鉄というのは、一見とても強くて頑丈なものに思えるはずです。
しかしながら、それら構造物がさらされている環境というのは想像以上に過酷で、老朽化するとあっけなくくずれてしまいます。
もちろん、橋や法面が何の前触れもなく突然崩壊することはなく、必ずなにかしら構造物の異変がサインとして現れます。
それらのサインを点検する作業が進んではいるものの、構造物の数が多すぎて点検作業が追い付いていない現状があります。
これは、日本に限ったことではなく、アメリカなどでも同様の事態が起こっています。
法面に限って言えば、日本では昭和40年代頃から法面にコンクリートを吹き付けて保護する工事が行われてきました。
現在、それらのコンクリートがひび割れたり、剥がれ落ちたりする老朽化が深刻な問題となっています。
そこで、必要になるのが維持補修工事なのです。
みなさんが見学される今回の現場も維持補修工事現場となっています。
維持補修工事が必要なコンクリートで保護されている法面は、コンクリートのひび割れや空洞化による影響で雑草や雑木が生えていることが多いです。
凹凸部分には土砂や石が堆積するので、それらを全て除去します。
堆積物等を除去した後は、高圧洗浄機を使って表面の汚れを落とします。
既設吹付面を綺麗にすることで、新しい吹付面との付着を妨げるものを全て取り除きます。
ニューレスプ工法では、新しいモルタル(コンクリート)を吹き付ける前に規定の間隔で各部材を設置しなければいけません。
それらの設置位置は、スプレーで色やマークを使い分けてマーキングします。
マーキングを間違えると各部材の設置位置の間違いに繋がるので、マーキングがある程度できたらその都度測量をしてそれぞれの数の確認を行います。
当現場はICT法面工の対象工事であるため、ICT技術を活用した現場管理を実施中です。
大翔ではUAVやレーザースキャナーを活用したICT測量を実施して、3次元データを作成しています。
既設吹付面にせん断ボルトを設置をすることで、新しい吹付面との一体化を図ります。
小さくて見にくいですが、写真左側に小さくポツポツと見えるものがせん断ボルトです。
モルタルに「BCファイバー」という有機繊維を混ぜて、強度をアップさせます。
有機繊維補強モルタルを吹付けると、劣化した既設の吹付材の性能を回復させることができるので、より耐久性の高い法面を形成できます。
現場見学会当日は、モルタル吹付をしている真っ最中です。
実際の吹付の様子を見学していただきます。
既設モルタルの背面に空洞が確認された箇所は、空洞を埋めるためにグラウト(セメントミルク)を注入して補強します。
既設吹付面に削孔しておき、水抜きパイプを設置します。
地山からの湧き水が既設モルタルの背面に溜まることを防ぎ、適切に処理できるようになります。
最後に施工面積や新設したモルタルの吹付厚さを計測します。
発注された通りに施工ができているか、使用した材料が適切に使われているかの最終確認です。
各段階でもICT測量を行いますが、もちろん最後の出来形計測にもICT測量を活用します。
見学会ではUAVでの自動飛行作成のデモンストレーションや、レーザースキャナーの操作体験もご用意しているのでお楽しみに!
SD工法は無足場でロックボルトの施工ができる工法で、大翔が得意としている工法です。
従来の方法では、鉄筋を挿入する穴を削孔する際に大がかりな足場の設置と重機の使用が必要でした。
足場の設置ができるスペースがないと施工ができないので、狭い民家裏や重要文化財付近での施工が難しいです。
そのデメリットを解消したのがSD工法です。
SD工法はワイヤーで削孔機を立てて施工するため、削孔機が軽量であり、削孔機の移動や設置にクレーンを必要としません。
そのため周辺の樹木を伐採することなく削孔ができ、森林の中でも樹間削孔ができます。
今回見学していただく多賀町の現場は傾斜が厳しいですが、SD工法を使うことで作業スペースを最小限に留めてスムーズに施工を行っています。
興味がある方はぜひSD工法のページも当日までに覗いてみてください。
このページを読む前よりも法面工事のイメージが膨らんだでしょうか?
現場見学会の当日は、このページに書いてあることをおさらいしながら現場に向かいます。少しでも興味を持ってもらえれば嬉しいです。
見学会当日、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています!